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2022年9月26日

物理的神経筋電気刺激(EMS)の実際と可能性と効果

臨床スポーツ医学、第38巻第6号、特集アスリートを支える物理療法から引用、参考に執筆。

 

物理療法(electrophysical agents, physical agents, physical modalities, therapeutic modalities)は、リハビリテーションに何かしら関与しない限り、私たちにとって身近な存在ではありません。2014年に米国理学療法士協会(American Physical Therapy Association : APTA)は、biophysical agentsという言葉をつくり発表したようです。定義は「さまざまなエネルギーを使用した広範囲の治療から構成され、筋収縮力の補助、望まない筋活動の抑制、開放創や軟部組織の治療促進、外傷・手術後の筋力維持、鎮痛、浮腫改善、循環改善、抗炎症、筋骨格系損傷や循環器疾患に関係した結合組織伸展性の改善、関節可動性の改善、神経筋パフォーマンスの改善、組織灌流(かんりゅう)増大、瘢痕(はんこん)組織の除去、皮膚疾患の治療などを実施する」となっています。

 

物理療法の中でも超メジャー級の電気療法の歴史は、紀元前2500年の石材彫刻に、ローマで魚の電気が治療として利用した記述が発見され、紀元63年ギリシアにてデンキウナギの電気を治療としつ利用していたようであります。1941年には、米国にて薬物療法が製薬産業によって発展しはじめて、1940年代に米国では直流電気刺激による脱神経筋の筋萎縮予防や筋力増強などでしようしていたようです。1965年にはMelzackとWallがゲートコントロール説にて電気療法の鎮痛効果を報告されたとあります。

 

しかし、「鎮痛効果目的」で物理療法を実施する場合、プラセボ・ノセボ効果が認められるそうです。プラセボ効果とは、意味のない治療であっても良い反応を示す効果で、ノセボ効果は、意味のない治療であっても副作用が発生したり症状が悪化したりすることをいいます。

 

物理療法の問題点は、米国理学療法士協会は、「多動的な物理療法中心の治療ではなく、運動療法などのアクティブな治療に繋げていくべきである」と2015年に報告したとのことです。現場を知る者としては、ごもっともだと感じます。ラジオ波による温熱療法やアイスパックによる寒冷療法など運動器パフォーマンスを低下させないで如何に効率的に実施していくかは、経験がものをいう世界だけあって、いつ、どこで、だれに、何を目的に、どのような手段を用いるかの総合的に最善策を考えなければいけません。

 

改めて物理療法(physical medicine)は、生体に物理的刺激を用いる治療方法でありますが、温熱療法、寒冷療法、水治療法、光線療法、極超短波療法、超音波療法、高圧酸素療法、陰圧閉鎖療法、牽引療法などがあるリハビリテーション医学(physical therapy and rehabilitation medicine)の中に電気刺激療法があり、歴史的には1700年代半ばくらいからだそうです。

 

電気刺激療法には、
①経皮的電気刺激法(TENS)
②直流(DC)
③マイクロカレント(微弱電流)
④高電圧(パルス)電気刺激療法(high voltage pulsed current therapy : HVPC)⑤干渉波電流刺激療法(interferential current stimulation : IFC)
⑥神経筋電気刺激療法(neuromuscular electrical stimulation : NMES)※別名EMS
⑦ロシアン電流(ロシアンカレント)
⑧立体動態波

 

などが代表格です。これらの電気刺激療法は、運動神経、知覚神経、筋肉、軟部組織に対して電気刺激を加えて、生体の反応を促通または抑制する治療法とされているとのことです。

 

その中でも筋トレエステ銀座で採用している物理療法上の筋電気刺激療法(electrical muscle stimulation : EMS)と呼ばれ、実際の刺激方法は神経筋電気刺激療法(neuromuscular electrical stimulation : NMES)として医学分野で報告されていることが多いとのことです。

 

基本的なメカニズムは、対象となる筋肉の支配神経または筋肉自体の膜電位に電気刺激を与えて変化し、筋収縮が誘発されるという理屈です。刺激の強度を強くすればするほど強い筋収縮が得られますが一方で知覚神経も刺激されて疼痛が強くなります。細い神経繊維(速筋 : タイプII繊維)が刺激されやすく、刺激を繰り返すと同じ筋群ばかりが収縮しやすいために筋疲労が起きやすい現象が確認されているようです。

 

Langeardらによる大腿四頭筋を対象とする筋力強化研究では、高齢者を対象に1回20〜30分、週3〜4回の訓練を8週間行い、約10%の筋力増強が得られたと報告されていたり、Jonesらの研究では、呼吸器・循環器疾患で体力が低下や全身状態が不良な患者に対しても筋力増強効果を認める報告をしていたりてま、有効性が証明されているとのことです。また、集中治療室(ICU)での廃用予防や重症の敗血症や術後患者、COVID-19の重症例にも活用されているとのことです。

 

それでは、神経筋電気刺激療法(EMS)の実際を例になるべくわかりやすくまとめてみます。

 

EMSは経皮的に電流を流すことで骨格筋の筋収縮を誘発し付随する生理的反応が起こります。随意的な努力を必要とせず筋活動を誘発すると言うことです。EMSは電流によって運動ニューロンに脱分離を起こして骨格筋に収縮を引き起こします。脱分離した神経の興奮性は末梢と中枢の両方向に伝播します。運動神経の興奮が遠位に伝播すると他動的に筋収縮を誘発し、同時に求心性の感覚入力が末梢神経より脊髄を上行して感覚野に伝わって、結果、中枢神経系を促して、加工性入力を増加させる中枢神経効果も生じ、さらに、EMSは骨格筋の組成を変化させるとの報告されていて、EMSによる筋肥大において、筋の構成タンパクであるミオシン重鎖アイソフォームは速筋タイプよりも遅筋タイプの方が増加することも報告され、また筋萎縮に対してEMSを導入した研究において筋生検の結果、骨格筋萎縮因子であるミオスタチンの遺伝子発現を抑制した報告もありと、「スゴい」でまとめさせていただきます。

 

最近は、簡易型神経筋電気刺激機器も家庭用・個人用で普及したことは、喜ばしいことですが、EMSではターゲットとなる部位のみを集中して鍛えられる一方で電極近辺の表層の運動単位のみの刺激であり、ターゲット以外の筋の鍛錬はできないし、筋力向上だけでは運動時の筋力発揮効果は低いとされると説明しています。

 

EMSは、運動習慣のない人や筋収縮症例における筋力・筋量向上に対しては効果的であると説明されています。ロコモティブシンドロームにも高い効果が期待されていますからEMSの更なる活動や応用が期待されますね。

 

適切な運動や生活習慣改善、生活指導・食事指導などを組み合わせて総合的に実施することが重要になります。特にメンタルトレーニング、メンタルケアは挫折しないために必要です!

 

陸上競技研究と言う書籍の中で海外論文として「電気刺激による筋力トレーニングの効果」によると極めて短時間での最小限の精神的肉体的努力で30〜40%の筋力の増大を示す結果が発表されています。まさにEMS!

 

本質を追求するなら筋トレエステ銀座へ!

 

筋肉痛がなくても筋肥大は起こり、筋力は増すのです!そう言う時代です!繰り返し効果、プレコンディショニング効果です!