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ビューティビジネスの現状と課題/ビューティ・イノベーション・ビジネスモデル

2022年8月21日

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ざっと書いていますので誤字脱字、変な感じごめんなさいwww
図表が綺麗に掲載できなかったのでまたリライトしたときにでも追加しますwww

ビューティ産業とは

ビューティー産業は、巨大なビジネスへと成長し続けている。しかし日本の美容関連企業でグローバル化に成功し世界的ブランドが誕生しているのは、化粧品業界である。ビューティー産業を美容プロダクトと美容サービスとに分けてみた場合、美容サービスにおいて飛躍的な成長を遂げ世界的ブランドになった日本の企業といわれて答えることができない。美容サービスで世界的ブランドは、存在しないのかもしれない。また美容サービスに関する学術的研究や統計データが少ないということは、科学者が積極的に研究をしていない分野なのだろう。これまで研究対象にあまりされてこなかった美容サービスに注目し出来る限り収集した資料や情報をまとめてみたい。

21世紀の大きな変化は、何だろうか。顧客のニーズの多様化であろう。テクノロジーの進化と共に人々の生活もより便利でより豊になっている。人々の価値の変化に伴い、モノ消費(機能に価値を感じること)からコト消費(経験に価値を感じること)へ、そしてトキ消費(瞬間の価値を共有すること)と価値の変化が起こっていると言われて久しい。そして現在、所有から利用へと消費生活が変わってきていると言われている。まだまだ所有意識が根強いものの近い将来モノを所有することはなくなるのかもしれない。そのような時代に登場したのがサブスクリプション(subscription)というビジネスモデルだ。ビューティービジネスにもサブスクリプションの波がくると仮設を立てた。

イノベーションとは

コロナ禍の状況下で本当に必要なことは何かを深く考えされる時間となった。真に必要なイノベーションとは、何なのか。イノベーションという言葉は、人によって様々な表現をされている。

「イノベーションとは、価値創造である」と社会情報大学院大学先端教育研究所の准教授である荒木啓史氏(東京大学・大学院にて教育学学位・修士とオックスフォード大学社会学博士)は、回答をしてくれた。また、オープンイノベーション白書第三版(2020年5月29日更新情報)経済協力開発機構および欧州委員会統計庁「オスロマニュアル」2018によるとビジネス・イノベーションには、プロダクト・イノベーションとビジネス・プロセス・イノベーションの2類型の設定と定義があり「プロダクト・イノベーションは、新しい又は改善された製品又はサービスであって、当該企業の以前の製品又はサービスとはかなり異なり、かつ市場に導入されているもの。ビジネス・プロセス・イノベーションは、1つ以上のビジネス機能についての新しい又は改善されたビジネス・プロセスであって、当該企業の以前のビジネス・プロセスとはかなり異なり、かつ当該企業によって利用に付されているもの」と示されている。また大学新聞(令和2年4月10日)の記事によると「イノベーションという言葉が日本に入ってきた頃は、創造的破壊と翻訳された」と書かれている。また、経済産業研究所の長岡貞男氏によると「日本経済の今後の成長に、生産性の向上とイノベーションが鍵を握っている。生産性の向上とは、既存の商品の生産をより少数の労働力で実現することであり、したがって『リストラ』のことだと解釈される場合もあるが、それは特定の状況で生産性の向上に必要となる過程の一例に過ぎない。生産性の向上とは、一定の資源を利用してより大きな経済的な価値(最終的に消費者の便益を高める)をもたらすことであり、これには、今まで供給されていない新しい財やサービスの供給を実現すること、環境への負担やエネルギー消費を増やさないで同時に財やサービスの供給を拡大すること、健康で仕事に従事することとが出来る高水準の医療を提供すること、限られた土地の制約の中で国際競争力のある食料生産を行うこと、これらは全て生産性の向上である。それを実現するためには、新技術の開発と利用による課題解決、すなわちイノベーションが必須である。イノベーションとは、新しい知識を活用して経済的な価値を創出することである」と説明している。イノベーションという言葉の定義は、時代によって変化しているため時代と共に定義が変わるユニークな言葉であるが一定の共通点はあるようだ。ダイヤモンドオンラインによるとイノベーションという言葉の元となっているニューコンビネーション(新結合)という言葉を初めて使ったのは、ドイツの経済学者ヨーゼフ・アロイス・シュンペーター(1883-1950)であると説明している。内閣府によると「イノベーションとは、新しいものを生産する、あるいは既存のものを新しい方法で生産することである。経済学者のシュンペーターは、イノベーションの5つの形態として、<1>創造的活動による新製品開発(プロダクト・イノベーション)、<2>新生産方法の導入(プロセス・イノベーション)、<3>新マーケットの開拓(マーケット・イノベーション)、<4>新たな資源の獲得、<5>組織の改革(組織イノベーション)を挙げている」と説明している。ここでイノベーションには、生産性向上が関わってくることが理解できる。生産性とイノベーションの関係指標の国際比較なども研究論文として発表されているがビューティービジネス・イノベーションの関係指標が存在しない。そのため今後の研究対象としたい。

経済学でお馴染みの需要と供給曲線であるが価格設定は、需要(demand)と供給(supply)のバランスで決まる経済の流れは資本主義社会において当たり前になっている。需要が多ければ価格は高騰し需要が少なければ価格も数量も少なるなる。コロナ禍においてマスクが典型例である。コロナ禍前までは、50枚500円程度だったものが需要と供給のバランスが崩れ50枚15,000円などの高値でネット販売されたのだ。

絶望を希望に変える経済学(2020)によると経済成長の理由を労働生産性(労働者一人1時間当たりのアウトプット)が増えたからだと説明している。またGDPは、値段がついていて販売できるものしか対象にしないとも説明もしており現代社会では、インターネットが普及しSNSなどが広く利用されている一方で無料の価値をどのようにGDPに反映していくのが望ましいのだろうか議論はまだ始まっていないようだ。

「生産性」と「イノベーション」は、切っても切れない関係ということは、理解できる。新型コロナウイルス感染拡大とともに働き方改革も進んでいるのが日本である。日本型の同一労働同一賃金もイノベーションにどのような影響をもたらすのだろうか。厚生労働省によると「パートタイム・有期雇用労働法によって大企業2020年4月1日、中小企業2021年4月1日より施行。労働者派遣法は、2020年4月1日より施行」と発表した。また、厚生労働省によると令和2年6月1日の改正法の施行に伴い、職場におけるハラスメント関係法令の改正内容を発表した。労働基準監督署が定めるルールや厚生労働省が実施する職場環境をより良くための法施行などを考慮しながら企業は、イノベーションを起こしていくことになる。

美容サービス関連情報が少なく正確な実態および現状を把握するのが容易ではないことである。また美容業界において革新的な事業全体の仕組みを変えるまでのビジネスモデル・イノベーションを起こせるのか疑問もある。QBハウスが生産性向上を実現したプロセス・イノベーションは、理容業界に激震が走った。イノベーションを起こせなかった理髪店にとっては、生き残りが更に難しくなってしまった。イノベーションの裏には、必ず犠牲者がでてしまうのだろうか。美容業界に関わる全てのステークホルダーが共感できるビジネスモデル・イノベーションを構築することを目指す。そこで他業種で成功しているサブスクリプション型ビジネスモデルに着目した。ビューティービジネスに応用してスケール(scale:規模)するかをプロトタイプで走らせてみないと確かな感触を現場レベルで察することが難しい点は否めない。イメージ的には、良さそうに見えても実現場で起こる問題は多岐に渡るだろう。そこを複雑ではなくシンプルな仕組みを実現できれば、近江商人の三方よしが実現できるのではないだろうか。

一般的にサブスクリプションは、人を介在しないで顧客のビッグデータを基にAI(artificial intelligence:人工知能)がサブクスライバー(サブスクリプションのユーザーの事を指す言葉)の思考、感情、行動、選択などの行動分析など多岐に渡る顧客情報を基に顧客満足度を高める施策を展開したり顧客にオススメの情報を提供したりする。

ポイントは、2点ある。1点目は、人が介在せずに顧客分析や予測を完全自動化で販売促進マーケティングを実現できることである。2点目は、オンライン上でサービスを提供することを基本として設計することである。しかし今回は、ビューティービジネス特に美容サービスにおいては、サブスクリプションサービスを実現するならば人が必ず介在する必要がある。最近話題になっているオンラインフィットネスであっても人が介在している。初音ミクのようなAIが講師としてレッスンしてくれたら楽しいかもしれない。必ずしも人が接触する必要がない美容サービスであればサブスクリプション型のビジネスモデルは効果的かもしれないが、今回は、人が介在するサブスクリプション型ビジネスモデルを構築する。今後、髪を切るにもエステティックを受けるにも人はいらないというプロダクト・イノベーションが起こる可能性もある。すでに自動シャンプー台も開発されている。美容業、エステティック業、ネイル業などの美容サービスは、人対人が基本である。美容サービス全般に言えることは、供給者(人)が需要者(人)へ対面(face to face)で美容サービスを行う労働集約型では、プロダクト・イノベーションやプロセス・イノベーションは起こせてもビジネスモデル・イノベーションは、難しいのではないだろうか。サブスクリプション型美容サービスによって顧客管理を効率化でき且つ顧客生涯価値を高めることができるようなら美容サービスにもサブスクリプション型ビジネスモデルは、浸透する可能性は高い。三方よしという絶対条件が必要である。業界全体を底上げできるビジネスモデル・イノベーションを我々は求めている。

オーストリアの経済学者であるシュンペーター(Joseph Alois Schumpeter)は、イノベーションの担い手を起業家(entrepreneur)と定義した。国土交通省のサイトによるとシュンペタ―は、イノベーションの概念に、ロシアの経済学者ニコライ・コンドラチェフ(Nikolai Dmitrievich Kondratieff)が提唱した約50周期で景気循環(サイクル)するという学説を加えて説明しようとしたと説明している。今は、人工知能、ICT、ビッグデータなどデジタルトランスフォーメーションの波が来ている。新型コロナウイルス(COVID-19)によって変化が加速していることを肌で実感できるレベルだ。あえて波に乗り遅れるという選択もあるが今回の波は素直に時の流れに身を任せた方が良さそうである。

米国の経済回復の新たなシナリオをK字回復として表現している。大手IT企業だけが成長しているということを意味したわかりやすい例えである。世界的にみても米国の大手IT企業は、驚異の成長をしている。株価をみても一目瞭然である。一方で旅行業や中小企業は苦しい状況が続いている。二極化社会がいよいよ到来してしまうのだろう。ハイテク企業の伸びからもデジタルトランスフォーメーション(DX)によってすべての業界が「既存事業+テック」を併せ持ったらハイテク企業とも勝負ができるのではないだろうか。既存の強みにテクノロジーをプラスしたら良いだけなのだがなかなか人的資源含めた決断がし難い事情もわからなくもない。

コロナ禍によって対面型から非対面型にシフトしたことでデジタル化が加速したが常に最新の機器が求められることを忘れてはいけない。常に進化し続けるデジタル革命は、目まぐるしく技術革新が進む。1年前のモノは、もう古いと感じてしまう。常に最新、常に最先端を進まなければいけなくなったというデジタル化の弊害もある。デジタルへの投資が増えることに抵抗をもってはいけないのである。デジタル化が進めば進むほど、アナログの良さを感じることもできる。

リアルの価値が高まる

このままいけば、ビューティビジネスの中でも店舗サービスの価値は、どんどん高まっていく。

世界と日本のビューティビジネスの現状

マッキンゼー&カンパニーが元データとして活用したユーロモニターの情報によると世界の美容プロダクツ市場規模は、推定50兆円である。それ以外の統計データは、定義が異なり規模が様々である。また色々な書物や研究機関の情報を探したが2020年8月時点において最新の統計データが存在しない。10年前のデータなどは、ネット上で存在するが2020年に近い最新の統計データを見つけることができなかった。日本の美容サービス市場規模は、約1兆5,000億円であるが情報元は、第14次業種別審査事典第8巻(2020)金融財政事情研究会である。世界と日本におけるビューティー市場規模についての正確な情報が少ないことからも市場の成長が期待できるとも考えらえれる。ビューティー市場は、世界的にも拡大傾向にある。ビューティービジネスに高付加価値を感じている女性たちが求めるモノやコトを提供し続けることで更なる市場を開拓できるだろう。性別を問わずニーズは高まるに違いない。

世界のビューティー市場についてマッキンゼー&カンパニーが発表したデータによると世界には、5000億ドル(53兆円:106円/ドル)を超えるビューティービジネス市場が存在する。CAGR(Compound Average Growth Rate:年平均成長率)は、年4.6%と安定的に成長している。しかし本データは、美容プロダクツに関する限定的な情報であり、美容サービスの世界規模の確実な統計データが入手できなかった。世界のビューティービジネスの確かな市場規模を表すデータが存在しないことも大きな発見である。金融財政事情研究会の業種別審査事典第8巻(2020)によると日本のビューティー市場の中でも理美容サービス(カットやパーマネント、毛染め、エステティックサービス、ネイルサービス、まつ毛エクステンション、着付け、メイクアップなど)の市場規模は、約1兆5,000億円と推定されている。美容サービスの世界市場規模は、推定25兆円である(世界の名目GDP全体の日本の名目GDP(シェア6%)シェア率を基準に計算)。

日本のサービス化の進展と国際比較(統計でみる日本2020)によると2017年の日本国内総生産(GDP)における日本のサービス産業の比率は、約70%である。アメリカ(80.2%)、イギリス(79.2%)、フランス(78.9%)には及ばない状況である。日本は、1970年に比べて2017年は約20%のサービス化が進んだ。また、世界の工場化していた中国のサービス化が急速に進んでいることもわかる。「ペティ=クラークの法則」の通り、経済の発展に伴い第3次産業(サービス業)に産業構造のウェイトが移動していくことがわかる。

日本の産業構造は、着実に第3次産業の発展によりサービス化へ進んでいる。下記の図は、科学技術基本法に基づき5年毎に改定されている科学技術基本計画で使われるようになったSociety5.0(ソサイアティ)を表す内閣府が作成し発表される。

内閣府によると「Society 5.0で実現する社会は、IoT(Internet of Things)で全ての人とモノがつながり、様々な知識や情報が共有され、今までにない新たな価値を生み出すことで、これらの課題や困難を克服する。また、人工知能(AI)により、必要な情報が必要な時に提供されるようになり、ロボットや自動走行車などの技術で、少子高齢化、地方の過疎化、貧富の格差などの課題が克服されます。社会の変革(イノベーション)を通じて、これまでの閉塞感を打破し、希望の持てる社会、世代を超えて互いに尊重し合あえる社会、一人一人が快適で活躍できる社会となる」としている。美容産業におけるSociety5.0は発表されていない。

ICT技術やビックデータを活用したサービスがビューティービジネスにも増えてくることだろう。一方で世界のGDPに占める日本の割合は、低下している。GDP(Gross Domestic Product:国内総生産)には、名目GDP(そのときの市場価格で評価したもの)と実質GDP(名目GDPから物価変動を差し引いたもの)があり経済成長を数値するGDPデフレーダー(指標)がある。数式は、「名目GDP÷実質GDP=GDPデフレーター」となり1以上であれば物価上昇インフレーション(inflation)で、1以下であれば物価下落デフレーション(deflation)となる。

2017年時点での日本の名目GDP規模の推移図によると日本は、デフレで景気低迷状態である。ビューティービジネスに対するニーズは常にあるが需要と供給バランスからみると供給過多な状態である。

世界の名目GDPは、2000年に約34兆米ドル(米国30.3%、ユーロ圏19.2%、中国3.6%、日本14.4%、その他32.5%)であったが2017年は、約2.4倍の約80兆円(米国24.3%、ユーロ圏15.8%、15.1%、日本6.1%、その他38.8%)である。

2018年の世界GDP「849,300億ドル」で1位米国「205,800億ドル(24.7%)」、2位中国「133,680億ドル(15.7%)」、3位日本「49,720億ドル(5.9%)」である。2024年の予測は、世界GDP「1,115,690億ドル」で1位米国「257,930億ドル(23.1%)」、2位中国「209,790億ドル(18.8%)」、3位日本「62,600億ドル(5.6%)」である。

下記の4つの円グラムの予想について内閣府は、日本のブランド力は、「グローバル化が進み、ヒト、モノ、カネ、ジョウホウの往来が自由になってくると、単に価格が安いことだけでは競争力を持たなくなってくる。品質や特徴的な価値が改めて見直されるようになると、日本の良さが再認識される可能性がある。日本独自の自然や歴史・文化を背景とした個性、日本発のビジネスの仕組みを発展させた新たなビジネスモデル、ロボットなどの先進的な技術などの組み合わせによって、改めて競争力を強めていく余地は十分にあろう」と分析している。また世界への貢献として「少子化、高齢化、低成長はいずれの先進諸国でも直面している課題である。日本の少子化や高齢化は特に深刻であるが、これらに起因する諸課題への解決の処方箋が得られれば、それは他の先進諸国に先駆けたモデルを提示するものとなる」とも前向きに見解を示している。日本の経済発展とともにビューティービジネスの市場が拡大してきた流れを見るとビューティービジネスの輸出貿易は、発展途上国の模範となり日本式ビューティービジネスが世界の巨大ビューティー市場を作り上げることに繋がるかもしれない。

また、テレ東ニュースYouTubeによると「アメリカのワシントン大学の研究者らが、2100年の世界の人口と各国の経済力を予測した研究報告が、イギリスの医学誌「ランセット」に掲載された」というニュースを取り上げていた。2020年7月14日に公開された研究論文である。2064年には、地球人口は約97億人に達して、2100年には、約88億人による予測よりも20億人も低く見積もられている。

そして、最もインパクトがある世界人口推移を見ると日本は2100年には6,000万人で世界38位になるという。2100年の第1位はインド。第2位はナイジェリア。第3位は中国。第4位はアメリカと予測されている。

研究チームは、上記の人口推移データを基に各国のGDPを見積もったようだ。GDP国内総生産は、2035年には1位中国、2位アメリカと逆転するが2050年以降の中国の人口減少によって、2100年には、再びアメリカがトップになると予測している。人口が急増するナイジェリアは、28位から9位へ飛躍的に上昇すると予想している。テレ東ニュースによると「研究チームは、人口減少は、二酸化炭素の排出量削減や食料の生産に負荷がかからなくなるため良いニュースになる可能性があるが、労働者と納税者の減少により、経済的な課題が生じるだろう」という分析結果を報道している。

アメリカのワシントン大学の研究者チームは、世界的に女性の教育水準が向上することについて着目している。また研究チームは、世界規模で女性の労働人口が増えていくと推測しているため新たな美容サービスが誕生することも考えらえる。

日本国内においては、ビューティー市場は、成熟期を迎え安定期へと変化していると考えてよい。今後、大きな拡大を見込むならば、インバウンド需要(中国やインドネシア、台湾、中東、ナイジェリアなど)やミレニアム世代(デジタルパイオニア:現在25歳~34歳くらい)、Z世代(デジタルネイティブ:現在16歳~24歳くらい)など影響力をもつ購買層の囲い込みが今後の収益の柱となるだろう

2020年現在において世界や日本でビューティービジネスが成長してきた3つの要因について三菱UFL投資信託の分析をしている。

1つ目は、経済成長である。新興国は、所得増加に伴う化粧品をはじめ美容サービスへの支出や美への自己投資が見込まれている。日本のように女性たちが美へお金を使うようになってきたのだ。美の追求は、古代エジプトやローマ帝国時代にも存在したとされている。日本では、邪馬台国の女王卑弥呼も愛用者の1人という説もあるくらいだ。女性は、ほぼ毎日かかさず美への投資を行っている。日本では、すでに当たり前のレベルまで浸透した。美の追求は、国や地域、年齢、性別は関係がなく、マズローの5段階欲求説の高次の欲求である第五階層の「自己実現欲求」の表れからくるのだろう。その後、第二階層の「安全欲求」へと美の欲求が成熟されていく。つまり生活に欠かせないものへと変わっていくということである。人によっては、第一階層の「生理的欲求」つまり生きていく為に基本的・本能的な欲求「食べたい、飲みたい、寝たい、美しくいたい」へと昇華されている可能性が高い。元々は、所得増加に伴い美への支出も加速すると統計データからは読み解くことができるかもしれないが、人々は生まれもって元々、「食欲、睡眠欲、性欲、美欲」があるのではないだろうか。美欲は、眠っている欲求なのかもしれない。または、眠らされてしまった欲求なのかもしれない。なぜなら筆者には、女の子の子供がいるが、美欲は色々な場面ですでに表面化している。ネイルやメイクアップ化粧品に興味をもっているし赤ちゃんのお人形とおままごとをしていた時期もあった。しかし幼稚園に入ると規則正しくなった。小学校から義務教育の中で学校の規則があり、学校が休みの日には、お洒落をしたりネイルをしたり、ニキビを気にしたり、お化粧をしたりして美容グッズで楽しんでいる。成長を見ていると性欲よりも先に美欲が芽生えているようにさえ感じる。

ビューティー市場は、2020年のコロナ禍で統計データが不十分ではあるが、この局面も乗り越え、さらに拡大していくと予想できる。美欲が1度目覚めると永遠に続くものと考えて間違いないだろう。美へ執着しすぎたり依存しすぎたりしていたとしても周囲の人の生活に悪影響を及ぼすことは少ない。自己満足や自己充足感を高めてくれるのがビューティー市場である。ギャンブルやアルコール、薬物、ゲームなどと同じように美への飽くなき追求が問題視される可能性は十分にある。必ず良い側面もあれば悪い側面もある点には、ビューティービジネスに関わる人々は、目を背けてはいけない。筆者が名付けた「美依存症」という美に対する強い異常な執着が生み出す本質を見極めた上で「きれいになりたい」「若々しくありたい」という美欲とうまく付き合っていく必要があるだろう。

次に2つ目の要因は、社会の様々な変化である。女性の社会進出や共働き世代の増加で数多くの女性が社会で活躍している。このような動きは、ビューティー市場の拡大に繋がる要因になっている。また、近年急速に男性の美意識が高まってきている。ヨーロッパなどでは、男性のフレグランス需要が高く、売れ行きが好調であったり、日本でも男性がメイクアップをするようになったりと今までとは違った価値観が生まれている。まさにダイバーシティ(多様性)である。その流れからもメンズ化粧品需要やメンズ専門美容室、メンズエステ、メンズネイルも拡大傾向にある。新たな需要分野として男性向けのビューティービジネスもさらいに拡大していくことだろう。男女以外にもノージェンダーやジェンダーレスも今後拡大していくと思われる。

日本だけでなく、アメリカやイギリス、OECD平均をみても世界的に女性の社会進出が進んでいることがわかる。外務省によるとOECDとは、1961年に経済協力開発機構(OECD:Organization for Economic Co-operation and Development)が設立され日本は1964年に、原加盟国以外で非欧米諸国として初加盟した。事務局をフランスパリに置いている。原加盟国の37か国は、オーストリア、ベルギー、デンマーク、フランス、ドイツ、ギリシャ、アイスランド、アイルランド、イタリア、ルクセンブルク、オランダ、ノルウェー、ポルトガル、スペイン、スウェーデン、スイス、トルコ、イギリス、アメリカ、カナダ、日本(1964年)、フィンランド(1969年)、オーストラリア(1971年)、ニュージーランド(1973年)、メキシコ(1994年)、チェコ(1995年)、ハンガリー、ポーランド、韓国(以上1996年)、スロバキア(2000年)、チリ、スロベニア、イスラエル、エストニア(以上2010年)、ラトビア(2016年)、リトアニア(2018年)、コロンビア(2020年)である。OECDは,1,900名を超える専門家を抱える世界最大のシンク・タンクとして経済・社会の幅広い分野において多岐にわたる活動を行っている国際機関で「世界のスタンダート・セッター」として、2014年に日本が主導で立ち上げた「東南アジア地域プログラム等」の推進によってアジア地域の性格な統計データ等も発表されていくことだろう。ビューティー市場の拡大が期待されるアジア地域の最新情勢や情報が手に入りやすくなることを願う。公的資金をODA(Official Development Assistance:政府開発援助)といい2020年4月17日の外務省の発表によると日本のODA実績は、米ドルベース前年比9.5%増の155億0,672万ドル(円ベース前年比8.1%増の1兆6,909億円)となっている。米国、ドイツ、英国に次ぐ第4位であり,2015年以降5年連続で第4位である。世界経済の中で日本の影響力は、増していっていることは見落とされがちな点だ。ビューティー市場の拡大に伴う国際社会の変化に対して、日本の政府は、質の高いインフラ整備の促進等によって先進国の社会の発展に貢献しているようだ。それによって様々な働き方を産出し、結果、ビューティー市場の拡大という恩恵を受けていることを忘れてはいけない。

1人当たりのGDP(Gross Domestic Product:国内総生産)が増加することと1人当たりのビューティー市場規模も同時に拡大する傾向があることが上記の図から読み解くことができる。今後、新興国の成長とともに1人当たりのGDPが増加することで、日本や米国、フランス、ドイツ、イタリアのようにビューティー市場規模が拡大する国が増えることが期待できる。日本は、新興国のモデルケースになると期待したいが文化の違いや社会変化の違いから新たな発見があるのかもしれない。上記のユーロモニターの図表の通り日本人は、美容支出が最も高い。GDPがイタリア、フランスの半分以下のブラジルは、イタリアと1人当たりの美容支出がほぼ同じである。中国やインドといった新興国の女性たちが、経済発展とともに収入が増加し美容プロダクツや美容サービスへ支出するゆとりができてきたことも推測できる。

世界規模で女性の社会進出が進む一方で、新興国における所得増加は、日本ですでに起こっている現象である美容関連のモノ消費にはじまり、体験型のコト消費へ繋がっていくのだろうか。日本をはじめとする先進国で進む高齢化の波は、高付加価値商品やサービスなどの新たな需要を生み出すのだろうか。ビューティー市場の成長は、国の成長を示す指標になっているようにさえ見える。「新興国における変化」や「先進国における変化」、「価値観の変化」、「生活の変化」は、人々を豊かにする変化であってほしいと願う。

1985年に男女雇用機会均等法が制定されてから2020年で35年が過ぎた。筆者の年齢とほぼ同じである。1983年に東京ディズニーランドを開園したが1985年の女性の年齢階級別労働人口比率のグラムからも20代前半と40代~50代の労働力人口比率が高いM字型カーブであったが、30年後の2015年は、1985年の30歳~34歳の比率より約20ポイント上昇した。つまり30歳~34歳の女性の労働力人口比率が50%から70%に上昇したのである。そして平成30年2018年の女性の年齢階級別労働人口比率をみるとM字カーブが台形型に変化してきている。女性は、出産をしても会社を辞めることなく仕事を継続していたり、そもそも出生率が低下していたりと多様化している。また、共働き等の世帯数の推移の変化からも女性の社会進出が増加していることが一目でわかる。平成9年1997年を境に共働き世帯が男性雇用者と無業の妻から成る世帯数を超えてから上昇傾向は、止まらず増え続けている。

雇用者の共働き世帯が増加したことによって、夫婦が別々の財布をそれぞれが管理し始めた可能性が高いと読み解くこともできる。なぜなら女性がビューティー市場に自身で働いたお金を自己の裁量で支出する(自己投資)ことが自由にできていると推測できる。また近年、男性のビューティー市場への支出が伸び続けている要因としても共働き世帯が増えたことによる自由裁量(便宜裁量)で支出を楽しむことができるようになった結果、美欲への投資につながっていると推測できる。また女性も男性と共に美欲を共に満たす行為にも繋がり、価値共創が実現できているのかもしれない。東京メトロなどの交通広告を手掛けるレッツエンジョイ東京の営業担当者から聞いた話によると美容部門の売れ筋メニューは、カップルで美容体験できるメニューだそうだ。最もアクセスがあり購買に繋がっているというから驚きである。美容サービス体験を男女で同じ空間で共有する流れが起こっているというのもビューティー市場の拡大に繋がっているのかもしれない。日本国内の共働き世帯数の推移からも昭和55年1980年と今は真逆である。平成9年1997年を分岐点として共働き世帯が増加し始めたことは、社会の変化や女性の価値観に変化をもたらしているのだろう。また、ビューティービジネス産業で活躍する女性たちが増え続けていく受け皿にもなる。

上記の図からわかることは、日本では、1990年代後半から2000年代前半にかけて世帯収入が大きく下落しているにも関わらず、美容やビューティー関連の支出は、同期間中の下落もあったものの支出は、上昇の一途をたどっている。ビューティー市場が景気にあまり左右されないと言われ始めた所以でもある。

性別の垣根を越えて美容を楽しみたい人々にとってビューティーを楽しくことは、当たり前の世界になりつつある。自信がもてるようになったり、見える世界が広がったり、多様性を受け入れるようになれたりとビューティーの魔法は、人々の心を豊かにしているのではないだろうか。ストレス社会を楽しみながら乗り切る原動力となるにも繋がっているかもしれない。男性のビューティー市場も拡大傾向にあることが下記の図からも見て取れる。

最後に3つ目の要因は、美を支える技術革新である。アンチエイジング関連商品やウェルエイジングと言われる商品含めて健康美容を求めるアクティブシニア層の増加に伴う新たな需要を生み出している。美をきっかけに健康へと需要も高まっているビューティー市場は、今後さらに年齢を問わず幅広いターゲット層に向けた商品やサービスが誕生するだろう。

上記の図の通り、経済産業省が発表したビューティー・ビジネス・インデックスによると美容関連製造業の伸びが目立つ。美容関連サービス業に関しては、若干の低下はあるものの同水準と維持していることがわかる。

2017年に組成された美へ着目する投資ファンド「ワールド・ビューティー・オープン」三菱UFJ国際投信によると2002年以降ビューティー市場は、伸び続けている。特に化粧品市場の伸びがビューティー市場の拡大を牽引している要因としている。今までなかった投資ファンドとして美を追求する女性投資家や個人投資家にとても人気が高いようだ。投資のコンセプトは、「美の追求を、パフォーマンスの追求に」である。難しいと思われがちな資産運用を女性たちの身近なビューティー関連企業をリストアップすることで資産運用への一歩を容易にする投資先として証券のイノベーション商品となっているのかもしれない。美をモチーフにした投資信託は、今後増えてくるのだろうか。投資家は、ビューティービジネスにもSDGs(Sustainable Development Goals;持続可能な開発目標)への取り組みを求め始めている。ビューティービジネスは、サステナブルへの取り組みが遅いといわれているため今後急速な技術革新によって実現できるようになることを期待したい。世界や日本でビューティービジネスが成長してきた3つの要因は、かくまでコロナ禍前の状況である。withコロナ時代にも順調に成長していくという保証はないが不景気に強いというビューティービジネス産業の今後の動向は注視していきたい。

ビューティビジネス経営の現状

本研究の対象を美容業、エステティック業、ネイル業の美容サービスとしている。日本国内の上場企業の数は、美容業(美容院)4社(ASH運営アルテサロン、モッズヘアー運営MHグループ、ヤマノ、田谷)、エステティック業0社、ネイル業1社(ファストネイル運営コンヴァノ)の計5社である。理容店枠としてキュービーネットホールディングスを加えると6社である。2018年4月に東証マザーズ市場に上場した「ファストネイル」をチェーン展開する株式会社コンヴァノ(6574)以後は、上場企業が誕生していない。今後、3業種において上場企業が新たなに誕生するのだろうか。株式市場では、美容サービス主に美容店舗経営企業への関心は、極めて低い。2010年11月6日エステティック業界初の上場企業であったラ・パルレが民事再生に伴い上場廃止となり負の影響も少なからずあるだろう。ビューティービジネスの経営状況は、消費税増税に伴う消費低迷や新型コロナウイルス感染拡大の影響もあり先行き不透明で決して良いと言える状況ではない。感染防止対策やクラスター発生防止の観点からも顧客はパーソナルサービスを強く求めるようになっている。

ネイルサービス業の売上ランキングの情報が見つけることができなかった。大手と言われる企業が少ないことからもデータが限られているようだ。

美容業、エステティック業、ネイルサービス業について各データを基に以下の通りまとめた。

美容業とエステティック業の売上高は矢野経済研究所より引用
ネイルサービス業の売上高はネイル白書2020サイトより引用

美容業、エステティック業、ネイルサービス業の統計データは、以上の通りであるが矢野経済研究所や金融財政事情研究会の統計数値にも若干の相違がある。集計方法や定義の設定によって各企業が発表する統計データにも差異があることが理解できる。

下記の2つの円グラフから黒字企業の割合が国税庁よりTKC経営指標(BAST)のほうが高くなっていることがわかる。一般的には、節税をして納税額を抑えていると考えるのが自然である。たくさん納税をすることが企業の使命と考える経営者もいる。納税額に関しては、経営者の意識の違いが数値化されているように感じる。納税額を経営者に質問することは、本音の経営哲学を知ることができるし経営力を判断する1つの指標ではないだろうか。内部留保によって赤字でも企業経営が維持できている組織もある。

国税庁の公表データ平成30年度によると、65%は赤字企業で35%が黒字企業である。黒字申告割合35.0%は、8年連続の上昇であったが新型コロナウイルス感染拡大の影響で令和2年度2020年度は、赤字企業比率が増える可能性は高いが黒字申告割合の推移は、以下の通り上昇している。

TKC経営指標からもTKC全国会に加盟している公認会計士や税理士が企業経営に深く関与することで黒字企業が増えているということが数字から見て取れる。本研究を通して筆者の会社の財務は、TKC加盟の公認会計士事務所へ変更した。TKC会計システムを使っている公認会計事務所や税理士事務所に財務分析や経営指導を仰ぐことは、中小企業にとって黒字化経営に向けた取り組みと経営の見える化をタイムリーに実施できるという点でメリットがある。決算書作成や税務申告だけをしてくれる会計事務所ではなく、社会の変化に対応する企業組織づくりや経営判断に必要不可欠な助言をもらえることは、経営者にとって有難いことだ。

TKC経営指標の財務数値からサービス業、美容業、エステティック業、ネイルサービス業を見る。

TKC全国会に加盟している桑澤会計事務所によると全産業の動向から見た、サービス業(大分類)の実態について4つの分析結果をいただいた。

 

①黒字企業割合
サービス業 > 全産業 ⇒ 良いことである。

②限界利益率
サービス業 > 全産業 ⇒ 変動費が少ない分、限界利益率は高くなる傾向。

③労働分配率(高いほど生産性悪化)
サービス業 > 全産業 ⇒ 変動費や固定費のうちの設備費(家賃・リース等)が少ない分、人件費の占める割合が高くなる傾向。決して悪いことではない。

④1人当たりの人件費
サービス業 < 全産業 ⇒ 社員のモチベーションに関わるところで、生産性の向上+人件費の向上を図りたい。

中小企業のサービス業全般に言えることとして1人当たりの人件費に課題があるということが理解できる。1人当たりの人件費が全産業に比べて低い。改善するためにどのような施策を検討する必要があるのだろうか。答えは、人材教育を行うことであると結論づけている。ビューティービジネスに関わる人材の生産性を上げるために教育水準を向上させることは、ハリウッド大学院大学の重要な役割であることが理解できる。仕事を続けなら学べる環境としてオンライン化は、サービス業全体に貢献することができるではないだろうか。

サービス業(大分類)の動向と、その中での78洗濯・理容・美容・浴場業の特徴として78洗濯・理容・美容・浴場業の黒字企業割合が、サービス業の中でも低い。平成26年から平成30年にかけての売上の比率は、109%と、サービス業全体の中でも伸びが大きい。高付加価値サービスを高単価で提供する術を養うことで生産性を高め、利益を上げることに貢献できるのでないだろうか。

TKCの変動損益計算書から①美容業、②エステティック業、③ネイルサービス業の経常利益がなぜ低いのかなど変動損益計算書の表示の上から見ていきたい。

①美容業
黒字平均企業は、1人当たりの売上、限界利益が高い。1人当たりの人件費も高いため、人件費も控除したところの利益率は、黒字企業平均と全体平均とは、ほぼ変わらない。黒字平均企業は、1人当たりの設備費(家賃等)、その他固定費(広告宣伝費等)が低く抑えられている。それでも売上が上がるので、1人当たりの経常利益は、大きく差が出る。

桑澤会計事務所によると「仕入、外注費といった変動費が低いので限界利益率は高い。逆に人件費の割合は高いが、商売の基本である、変動費+人件費だが人の手間をかければ、付加価値が付くので売値は高くでき、変動費の比率は落ちる。逆に人の手間を落とせば、付加価値が低くなり売値も抑えざるを得ないので、変動費率は上がる。1人当たりの人件費も、サービス業全体より若干低いため、社員が転職してしまう可能性もある。売値の増加、出店時の立地を含めた家賃対策、広告宣伝費対策辺りで、人件費を上げながらも、経常利益を増加させる策の立案、実行が今から必要である」との見解をいただいた。

②エステティック業
黒字平均企業は、1人当たりの売上、限界利益が高い。仕入れ原価が美容業よりも安く、ほぼ人件費と家賃などに限られるため、高価でのサービス提供ができている結果と推測できる。1人当たりの人件費も高いため、人件費も控除したところの利益率は、黒字企業平均と全体平均とは、変わらない。黒字平均企業は、1人当たりの設備費(家賃等)、その他固定費(広告宣伝費等)が低く抑えられているにも関わらず売上が上がっているため1人当たりの経常利益は、美容業よりエステティック業が7万円ほど高い。

桑澤会計事務所によると「サービス業全体との比較では、①美容業と同じ傾向。美容業と比べると、売上高、粗利額、人件費は、すべて高いが、店舗の家賃(設備費)、広告宣伝(その他固定費)といった負担がより大きく、最終的には、経常利益は美容業より高い値になる。売値の増加、出店時の立地を含めた家賃対策、広告宣伝費対策辺りで、人件費を上げながらも、経常利益を増加させる策の立案、実行が必要である」との見解をいただいた。

③ネイルサービス業
ネイルサービス業の全体平均と黒字企業平均の大きな差は、1人当たりの限界利益でこれが678千円/年の差が出ている。よって黒字平均の1人当たりの経常利益は、466千円/年とサービス業全体を大きく超える。1人当たりの売上をいかに増やすかがポイントだ。あとは、人気店舗とそうではない店舗の差が顕著に数値に表れているのではないだろうか。黒字企業は、アートデザイン力(技術力)が高いのかもしれない。技術の差がはっきりするネイルサービスにおいて高付加価値サービスを提供するために技術力が第一に必要ではないだろうか。

桑澤会計事務所によると「サービス業全体との比較では、変動費の割合は低いが、人件費の割合が非常に高いのが特徴。但し、1人当たりの人件費を比べると、サービス業全体より低い値である。1人当たりの売上が低いために、このような値となってしまう。広告宣伝(その他固定費)といった負担が大きく、最終的には、経常利益はサービス業より低い値になる。従業員の効率の良い配置にて回転率(1人当たりの売上)の増加、広告宣伝費対策によるその他固定費の圧縮辺りが、経常利益を増加させる策になる」との見解をいただいた。

美容業、エステティック業、ネイルサービス業において黒字企業の実態、本質については、本データから読み解くことが難しいが数字の違いは理解することができた。

次にTKC給与統計より、美容業、エステティック業、ネイルサービス業の年間支給総額分布表から状況を読み取っていきたい。

結論は、美容業、エステティック業、ネイルサービス業は、全産業に比べて、全年齢別にみても年間給与賞与支給総額が低いことが理解できる。ビューティービジネスに関わる人々は、美容が好きからはじまり、その後、人をキレイにしたいという想いが自然と芽生えてくるものである。女性の活躍する数は、圧倒的に多い業種ではないだろうか。顧客に触れる時間が長いため、遣り甲斐や生き甲斐を感じる職業でもある。給料水準がサービス産業の中でも低い点を改善するとするならば、ハリウッド大学院大学にてマネジメント等含めて専門職にもとめられる理論と技能、そして経営力を身につけ、研究ができる人材として生産性を上げるビジネスモデル・イノベーションが必要であること見えてきた。

また経営マネジメント層は、同業の同年齢層の平均より、少しでも高い給与を支払ってでも、利益が出せるお店舗作りを目指す必要がある。最初に人材教育へ投資することが重要ではないだろうか。また現代経営の第一人者と言われるフレデリックW.テイラーの科学的管理法(2009年)を参考にビューティビジネスの知識を体系化し再現性が可能なものに仕上げ創業者の哲学と共に後世に引き継ぐ活動の一環としてサイエンティフィックマネジメントを構築する方法もある。

全産業の中でビューティビジネスに関わる人々の平均給料を高める施策を構築するためにどうしたら良いのだろうか。ビューティービジネス産業全体を再構築するビジネスモデル・イノベーションの必要性を感じる。

補足説明として年間総額は、中位数を記載している。年齢層の中で支給総額を高い順に並べたときに、丁度上から数えても下から数えても、真ん中の数字を取ることを中位数という。平均ではない理由は、給料は、労働基準監督署のもと、各都道府県にて最低賃金は決まっているが最高額は決まっていない。10人中9人が300万円、1人が600万円となったとき平均は330万円になるが、実態から考えると、会社の平均給与は、9人属するため300万円が妥当と判断する。そのため平均ではなく中位点を用いる場合がある。また、TKCの賃金BASTでは、サービス業の枠では集計せず中分類の集計のため、サービス業の平均値は出せない。TKC賃金BASTでは、抽出されていない加重平均を抽出したが加重平均値を出すことで、給与水準から新たな気づきを発見したかったが、残念ながら現状、美容業界の給与は他の業種よりも低いため、今後いかにして生産性を上げ、給与を高めていけた暁には、加重平均から新たな課題を発見できることだろう。今回は、加重平均を出しても、ほぼ同じ結果であったため省略した。

ビューティビジネスの課題

ビューティービジネス(美容サービス全般)

1. 教育水準の向上
2. 働き方改革(キャリアップ仕組化など)
3. 美容サービス提供者が使う機械性能のハイテク化・合理化・省力化
4. 低賃金化(給与水準をサービス業全体平均まで底上げ)
5. 価格値下競争激化(結果的に人件費削減による待遇悪化)
6. グローバル化(海外展開)
7. イノベーション(プロダクト/プロセス/組織/マーケット/科学技術)

1の教育水準の向上においては、2021年4月のビューティアンドウェルネス専門職大学(仮称)開学を目指していたが学校法人ミスパリ学園のサイトによると文部科学省より設置認可に伴う指摘事項が提示され改善に一定の時間を要するとして申請を取り下げたとある。2022年4月の開学を目指すとあるが教育水準の向上に期待していたが業界人として残念である。しかしある意味、ハリウッド大学院大学の存在価値は、より一層高まることとなる。

2の働き方改革(キャリアアップ仕組化など)については、ビューティービジネス産業の中でもエステティック業界がいち早く着手している。厚生労働省は、「職業能力評価基準」を公開している。職業能力評価基準とは、厚生労働省によると「仕事をこなすために必要な『知識』と『技術・技能』に加えて、『成果につながる職務行動例(職務遂行能力)』を、業種別、職種・職務別に整理したものです。わが国の『職業能力評価制度』の中心をなす公的な職業能力の評価基準です。下図のように採用や人材育成、人事評価、さらには検定試験の『基準書』として、様々な場面で活用できるもの」と説明している。

本研究対象にしている美容サービスにおける美容業、エステティック業、ネイルサービス業の中で唯一エステティック業だけ職業能力評価基準として厚生労働省が策定している基準に則ってエステティック業に携わる人々は、業務を進めていくことができる。筆者の会社でもエステティック業における職業能力評価基準で策定されている人財要件確認書やキャリアマップ、職業能力評価シート、導入・活用マニュアルなど多岐に渡る詳細に示されている情報を実践の場で活用している。美容業やネイル業にも応用できる内容になっている。エステティック業における職業能力評価基準書の一部は以下の通りである。

企業組織において実務を体系化することは、知識移転の価値や必要性を正当化するために必要である。その実務を評価する基準が本資料である。本資料をもとにエステティック業の共通認識として本評価資料を活用することができる。そして今後は、評価基準だけでなく実務の内容を動画コンテンツにすることでより視覚的にも伝えることができて職業能力評価基準を基に評価された人々がキャリアップに繋げていくことができる仕組みづくりが企業組織には求められる。将来のあるべき姿を見通せることで自身の能力のレベルや立ち位置、目標とする人物像に明確に近づいていけるようになるだろう。本職業能力評価基準が周知され衆知となることを願う。

持続可能な開発目標(SDGs:Sustainable Development Goals)への取り組みについてWWD JAPANによるとビューティービジネスにおいて「クリーンビューティー」が気候変動問題や環境問題、サステナビリティに対しての課題解決のトレンドになると見ている。また、WWD JAPANは、「今後さらに高まっていく消費者と投資家からの環境問題とサステナビリティへの注目に、企業はどう応えていけるのだろうか」と問いをなげかけている。WWD JAPANによると「近年SDGs(持続可能な開発目標)や企業評価の指標であるESG(環境・社会・ガバナンス)が注目を浴び、企業はサステナビリティ施策などを進めてきた。新型コロナ禍でもESGは優良な投資基準で、投資信託会社モーニングスターによると、世界の投資家は新型コロナ禍にあった1〜3月期の間もESGファンドに456億ドル(約4兆8336億円)を投入した」という記事を書いている。新型コロナウイルス感染拡大以前から環境問題への取り組みの重要性をビューティービジネス関連企業もコロナ禍をきかっけに同時に進めていく必要がある。国際連合によると「持続可能な開発は、将来の世代がそのニーズを充足する能力を損なわずに、現世代のニーズを充足する開発と定義。持続可能な開発を達成するためには、経済成長、社会的包摂、環境保護という3つの主要素を調和させることが不可欠」であるとしている。また国際連合としては、「持続可能な開発目標(SDGs)の諸目標とターゲットはいずれも、人間、豊かさ、地球、平和、パートナーシップという極めて重要な分野で、今後15年間の行動を促すこと」としている。

ビューティビジネスにおいても水道光熱費の節約はもちろんのこと、環境保全を意識した商品や備品を使用するなどエコロジーを意識した経営が求められている。

日本のような高度成熟国において少子高齢化に伴う人口減少や世界に類を見ない程のスピードで人口減少が進んでいる。2020年新型コロナウイルス感染拡大によってニューノーマルとしてマスクやソーシャルディスタンスを考慮した美容サービス店舗の運営のため顧客対応にも人数制限を設けている。よって生産性が落ち売上が減少するという悪循環になっている。コロナ禍以前から経済低迷は始まっていた。2019年10月から消費税が10%へと増税された直後のコロナ危機でもあり消費低迷とインバウンド需要激減という日本経済は、回復の見通しが立たない。

ビューティビジネスにおける集客にも課題がある。美容系マーケティング集客ツールは、限られている。下記の図の通り、人材紹介で有名なリクルート社が2007年4月からサービスを開始した「ホットペッパービューティー」が最も有名である。最近になって首都圏で圧倒的な人気を誇るメディア媒体がIT企業のミクシィ社が運営する無料掲載が売りの「minimo」も知名度は抜群である。東京メトロを中心に知名度のあるレッツエンジョイ東京もあるがカップル美容体験を売りにした特徴あるメディア媒体である。完全無料のメディア媒体として信頼度が高いGoogleマイビジネスのマーケティングも認知度が高まってきている。Google社は、日本においてGoogleマイビジネスの強化を行っている。公正公平な口コミ媒体にするために、口コミをするユーザーの足跡をすべてビッグデータという形で取得しているのだ。どこで誰が何をしたか。どこで誰が何を口コミしたか。口コミしている美容サロンに行った事があるのかなど人々のログから検証作業を人工知能AIが行っているのである。競業同士のつぶし合い書き込みをしていないかなど取り締まりを厳しく行っているのもGoogleマイビジネスの特徴である。難点は、検索者が銀座にいて検索して初めてオススメの美容サロンが人気順に表示されていくことだ。また顧客ニーズを把握しようとしているGoogleマイビジネスは、検索ユーザーの思考や行動履歴、感情などを読み取り、より検索ユーザーにマッチする美容サロンを上位表示しようとしている。使えば使う程、マッチング率は上がっていくようになっている。また、最近では、サブスクリプション型美容サロン紹介アプリなどがホットペッパービューティーやminimoに対抗すべきサービス提供を開始している。

美容業、エステティック業、ネイルサービス業の美容サービス店舗は、リクルートホールディング社が運営するホットペッパービューティーに掲載することで新規集客獲得に繋げている。銀座エリアの店舗は、毎月何十万円もの広告掲載費をかけている施設が多い。美容センサス2020年上期によるとネット閲覧・予約時に利用したサイトランキングでホットペッパービューティーが80.7%と1位、2位6.0%楽天ビューティー、3位4.1%minimoという結果である。業種別審査事典2020によると経営上の問題点1位84.0%で「客数の減少」となっている。顧客のニーズからも美容サービス店舗がホットペッパービューティー依存になるのは理解できる。

リクルートホールディングス社の2020年3月期決算資料によるとホットペッパービューティーなどの美容部門売上は、816億円で前年比より13.3%増となった。ミクシィ社の2020年3月期決算資料によると「minimo」が含まれるライフスタイル部門売上高49億5,300万円である。ライフスタイル部門には、「minimo」、SNS「mixi」、家族向け写真・動画共有アプリ「家族アルバム みてね」などが含まれているため「minimo」単体の売上高が公開されていないがライフスタイル事業部門は、ミクシィ社の売上全体の5%未満である。売上規模や登録施設数、予約数からも日本のビューティー市場において圧倒的にホットペッパービューティーの独り勝ちである。

ビューティービジネスの課題を色々上げてきたが美容サービス店舗経営者に足りないものは、マネジメント層に必要な「経営力」ではないだろうか。その1つにデジタルトランスフォーメンション(DX)への取り組みも含まれてくることだろう。

我々は、持続的価値を求めている。価値変遷からもわかるように経済の発展と共にそれに伴い価値も変化してきているのである。予測不能な気まぐれな人々の高付加価値に求める行動を分析するだけでは、持続的価値創造の解を導き出すのは難しいだろう。顧客が自由に楽しく最良のエクスペリエンスを得たとしても常に満足の先を求める人々の飽くなき探求心や秘密を理解するためにも顧客の行動を観察し続ける必要がある。カスタマーダイナミクスを実現するためにホスピタリティの本質を理解が必要になる。相手のために、相手の期待を超えた行動をすることがホスピタリティの本質である。愛のある対応が求められる。Open Journal of Marketing, 2016.1サービスにおける顧客間相互作用と顧客行動との関係に関する調査諸課題の検討によると「Martin and Pranter (1989) は顧客間相互作用の結果によってサービス・エンカウンターにおける顧客同士の関係が良好になったり、またその反対に悪化したりすることを主張し、前者を『顧客共存(customercompatibility) 』、後者を『顧客不共存(customer incompatibility)』として概念化した」と説明している。良好な関係を構築するために設けたコミュニケーションの場だったとしても顧客不共存によって関係が悪化する点についても人が交わる上では意識する必要がある。良かれと思った行動によって相手に不快な気持ちを与えてしまうケースもある。より良い関係構築を目指して継続的なつながりをつくる仕組みづくりは、ビジネスモデルに反映させる必要があることを再認識した。

米国の心理学者、アブラハム・マズローの欲求5段階説にリアルとネットを付け加えたものである。5段階欲求をリアルの満たすことができても生理的欲求と安全欲求に関しては、リアルのみ(横田尚哉)ではないだろうか。リアル=オフラインとしてネット=オンラインとして区別するとオンラインで継続的価値を創造できるともいえる。価値というのは、人それぞれ違いはあるものの精神的欲求を満たすには、ネットでも十分と考える人が現れても不思議ではない。複雑化、多様化する社会においてインターネットの存在は、ライフスタイルを大きく転換したのである。筆者は、オンラインライフスタイルの商標権を取得している。サブスクリプションによってカスタマーダイナミクスによる継続的価値創造は、オンラインによってさらに実現可能としている。より便利により高度な知識社会に変貌していくことだろう。

 

ニュービジネスモデル

サービス産業の特徴は、「サービスの同時性(生産と消費が同時)」である。そのためDXの手段としてサブスクリプション型ビジネスモデルが推奨されている。美容サービス業においては、「サブスクリプション+人」という概念を基にビジネスモデルを提案する。ニュービジネスモデルは、以下の通りである。

ビジネスモデルは、美容を「学ぶ」「体験する」プラットフォーム構築である。基本設計は、サブスクリプションの仕組みを導入にて顧客生涯価値(Life Time Value:顧客が生涯に渡り企業にもたらす価値・利益)を高めるため定額課金システムと従量課金システムを合わせて構築する。そしてカスタマーダイナミクスとして美容サービス提供者(技術者)とサブスクライバー(顧客)の繋がりを「オンライン」と「オフライン」で実現できるようにする。オンラインだけで完結するサブスクリプションではなく、オフラインにて美容サービスを提供できる点は、ビューティービジネスだからこその設計である。

 

①顧客の見える化 → 顧客の成長
②現場の見える化 → 現場の進化
生産性の飛躍的な向上を実現することを目指すビジネスモデルだ。

 

■本ビジネスモデルのミッション
美容を楽しむ人々に新しいライフスタイルを提案する。

 

■目的
美容サービス提供者(技術者)とサブスクライバー(顧客)をプラットフォーマー(platformer:和製英語)として両プレイヤーの関係性を見える化することで、より良好な状態を保つためのサポートをする。

 

■美容サービス提供者(技術者)5つのメリット
1つ目は、美容サービス提供以外の新たな収入の機会を知識の教授で獲得できる。実務家のプロフェッショナルな知識や技術(実践知)を販売することで事前にどんな人物なのかどのようなコンセプトで美容サービスを提供しているのかを伝えることができる。

 

2つ目は、決済の効率化である。サブスクライバー(顧客)は、予約確定と同時に事前決済をする。美容サービスを受けた後に美容サービス提供者(技術者)は、オンライン上で美容サービス提供完了を報告してサービスが完了となり正式決済され、相互レビューを行って完了となる。キャンセルや急な変更への対応には、プラットフォーム運営者側が利用ルールに則って対応する。

 

3つ目は、顧客データが共有できる。美容カルテや利用履歴を基にサブスクライバー(顧客)の要望や行動ログを把握して、事前情報によって顧客へより良いサービスを提供する準備ができる。

 

4つ目は、美容サービス提供店舗を価格競争から脱却させる方法として初回利用価格は、統一価格とする。オンライン動画配信で知識の教授を行うことで、高付加価値サービスである印象を与えることによって美容サービスの価値を事前認識してもらうことができる。

 

最後の5つ目は、こだわりや高品質を評価することによってサブスクライバー(顧客)に安心感を与えることができる。相互レビュー制度では、二択の評価(良いまたは残念)にすることでシンプルにわかりやすく相互が評価できるようにする。通常であれば、美容サービス提供者(技術者)側が顧客から点数評価や口コミ評価されてきたが評価基準が人によって様々であるだけでなく、美容サービス提供者だけが評価されるのは、不公平であるという考えから、今回でいうとサブスクライバー(顧客)側も美容サービス提供者(技術者)から評価されることによって公平性を保つことができる。また、クレーマー防止策としても機能するのではないかと考えている。

 

■サブスクライバー(顧客)3つのメリット
1つ目は、美容を「学ぶ」「体験する」の2つが叶う新しいライフスタイルを手にすることができるということである。今までは、「体験する」がメインで専門家から美容について「学ぶ」サービスは、ほとんど皆無に等しい。無料動画配信サービスには、情報があふれかえっていて何を信用して良いのかわからない時代にはいってしまった。情報過多の時代だからこそ、信用できる美容専門家を探すことができる。

 

2つ目は、美容室やエステサロン、ネイルサロンに行く前に、どんな人が美容サービスを提供してくれるのかほとんどわからない状態で初回を迎えることが多いため、初回の不安を和らげる方法として事前に美容サービス提供者(技術者)の人柄や知識、技術を知ることができる。相互にとってメリットが高いと考える。

 

最後に3つ目は、美容カルテへの事前入力によって、要望や利用目的などを美容サービス提供者(技術者)に事前に伝えることができる。また、美容カルテや美容経験を美容サービス提供者(技術者)側に事前に伝えることによって、より良い提案を受けることが可能となる。医療業界でも患者カルテ開示があるのだが美容カルテとして美容履歴や内容が記録されていないのである。美容カルテの取り扱いには十分な配慮がなされなければいけないが記録が残るという点では、安心感を得るメリットの方が多い。

 

美容を「学ぶ」「体験する」プラットフォームを通して、美容サービス提供者と顧客の関係強化を支援できることはもちろん、顧客の美容知識が高まることによって美容サービス業の高付加価値を理解してもらえることにも繋がる。

カスタマーダイナミクスによる継続的価値創造

美容サービス提供者(技術者)とサブスクライバー(顧客)のカスタマーダイナミクスによる継続的価値創造を表したのが上記の図である。

基本的には、メルカリ社のオンラインフリーマーケット(フリマ)をイメージしてほしい。今回は、オンラインとオフラインの組み合わせである。メルカリはオンラインのみである。ビューティービジネスにおいては、オンラインとオフラインが融合しやすい。今回の美容サービスは、オンラインで知識の教授を行い、オフラインでは美容サービスを提供する予約システムも稼働する。ホットペッパービューティーにメルカリの機能を併せ持ったものと考えてもらうとイメージが伝わりやすいかもしれない。オンラインでは、知識の教授を動画で提供する。このポイントは、美容サービス提供者つまり技術者をファン化するためである。紙やテキストだけでなく動画というのがポイントだ。SNSなどを使って無料で知識を提供するのではなく知識をお金にすることが重要である。

サブスクライバー(顧客)は、月額3,000円の利用権を支払うことで美容室、エステ、ネイルなどの美容サービスを通常より安く享受できる仕組みである。トータルビューティーサロンのような巨大な施設に複数のサービスを準備する必要もなくなる。各美容サービスがコラボレーションすることで「顧客共有」が可能となる。美容サービス提供者の美容サービスを享受するサブスクライバー(顧客)が本人の都合に合わせて各施設に予約をいれ美容サービスを受ける場合に1回毎に設定料金が発生する。利用後、一定金額が従量課金される仕組みだ。コロナ禍の影響で複数のサービスが1箇所にあるというビジネスモデルは、ソーシャルディスタンス(社会的距離)や3密(密閉、密集、密接)を意識して美容サービスを提供していく必要がある。コロナ禍以前であれば美容室は、1人の美容師が同じ空間に3人の顧客を絶妙な時間差で対応することで生産性を上げてきた。新型コロナウイルス感染拡大防止の状況では、複数の顧客を同時に対応することは、クラスター(cluster:集団)対策からも現実的ではない。提示する本ビジネスモデルは、美容サービス特有の「サブスクリプション+人」を実現する新しいビジネスモデルである。テクノロジーが生んだ美容サービスのニューノーマルだ。本ビジネスモデルを成功させるためには、サブスクライバーのウォンツやニーズを常に把握する必要がある。また、美容サービス提供価格も考慮する必要があるだろう。そして価値に見合った価格やプライシングをサブスクライバー(顧客)に提案することで長期に渡るリレーションシップを構築するできる。美容サービスにおけるストックビジネスとして安定的な収益化が実現できる。

 

デジタル・トランスフォーメーション(Digital transformation:DX)の収益化モデルとしてサブスクリプションが存在するのである。DXと訳されるのは、「trans」を英語圏では「x」と省略するからである。DXは、まさに顧客第一主義のビジネスモデルとして今後さらにサブスクリプション市場は、拡大していくと予測される。サブスクリプション・ビジネスの支援で世界規模のZuora創業者兼CEOティエンは、顧客の成功が就役を生む新時代のビジネスモデルとしてサブスクリプションは、単なる課金形態の変更ではなくビジネスモデルの変革であると言っている。動画配信サイトとして世界を代表する「ネットフリックス」、誰もが知るニューヨークタイムズだけでなく日本を代表する建設機械大手コマツ(小松製作所)のスマートコントラクト(smart construction)は、DXの代表として世界でも高い評価を得ている。コマツ社のDXは、ティエン率いるZuora社のサブスクリプションシステムを採用していることでも有名だ。デジタルトランスフォーメーションとは、スウェーデンのウメオ大学 (2020年6月現在は米インディアナ大学教授) のエリック・ストルターマン教授が2004年に提唱した「デジタル技術が全ての人々の生活を、あらゆる面でより良い方向に変化させる」というコンセプトが起源とされている(shareboss.net) 。なぜデジタルトランスフォーメーションが急成長を遂げているのかというとストックビジネスと言われる継続課金(recurring revenue model)ビジネスによって安定的な収益を確保する仕組みをより高度化されたシステムが裏で動いているためである。ストックビジネスという言葉は、日本人の経営者であれば1度は、耳にしたことがあるだろう。しかしこの言葉は、あくまで和製英語である。

 

2020年は、コロナイヤーでもありサブスクリプション・ビジネスモデルを採用していた企業の価値がますます高まることを証明する年にもなっている。Zuora社のサブスクリプション・エコノミーにおけるCOVID-19(新型コロナウィルス)の影響調査(日本語版)2020年7月によると「サブスクリプション・ビジネスモデルの素晴らしい点の1つは、多くの場合、時間の経過とともに顧客の購買量とサービスの利用回数が増えること。そのため、利用される機能やアカウント数、追加購入されるアドオンの数が多いほど、サブスクリプション契約一件あたりの平均収益は増えていく。サブスクリプション契約一件あたりの収益成長率がプラスということは、時間の経過とともに顧客がより多くのサービスを選択し、サブスクリプションへの支出を増やしていることを意味する」と公表した。さらにレポートの要約として「新型コロナウィルス(COVID-19)の影響により、消費者、世界経済、そして企業は困難な時代に早急に適応することを求められた。その中で1つ明らかになったことは、サブスクリプションビジネスが持つレジリエンス(回復力/復元力)の高さ。2020年の第1四半期、S&P500構成企業における売買契約数が年率-1.9%だったのに対し、サブスクリプションベースの収益は引き続き9.5%の成長を見せた。これらの数値は昨年の平均年間成長率よりは低いものの(S&Pの売上は5.4%成長、サブスクリプション収益は18.7%)、サブスクリプションを扱う企業はこの危機のさなかにおいても引き続き従来型のビジネスモデルを凌駕している。COVID-19パンデミックの経済的影響にもかかわらず、サブスクリプションを扱う企業の80%は成長を続けている。サブスクリプションを扱う企業のうち半数はパンデミック前と同じ速度で成長し、18%の企業では契約者数成長率がさらに加速している。ただし、ほとんどの企業で、各サブスクリプションに関連する収益性全体の伸びはこれほどではなく、既存顧客へのアップセルによる収益拡大には減速の傾向が見られる」と発表した。

ビューティビジネスは、これからである。

長々と書いてきたが最後まで目を通していただいた方には、想いだけでも伝わってくれたら嬉しい。