2025年5月29日
EMS(Electrical Muscle Stimulation=電気的筋肉刺激)を受けたとき、「ビリビリして痛い」と感じる人もいれば、「全然痛くない」「効いてるか不安」という人もいます。この差は、機械の出力の問題ではなく、個々の身体の状態や神経反応の違いによるものです。
本記事では、なぜEMSが痛い人と痛くない人がいるのか、そのメカニズムを医学的・神経科学的な観点から解説し、正しい対処法を提案します。
EMSは皮膚表面に電極を貼り、そこから電流を流すことで筋肉を収縮させます。最初に刺激を受けるのは皮膚の中にある**感覚神経(Aδ線維やC線維)**で、ここが痛みや違和感の原因になります。
Aδ線維:鋭く局所的な痛みを感じる神経
C線維:鈍く持続的な痛みを伝える神経
この神経の興奮レベルには個人差があり、それが「痛みの感じ方の差」につながります。
乾いた皮膚 → 電気が通りづらく、表面でビリビリ感が強くなる
ジェルや水分が足りない → 電流が均等に流れず痛みやすい
貼る場所の脂肪量や筋肉量 → 刺激の伝わり方に差が出る
神経の「閾値(いきち)」とは、刺激を感じ始めるレベルのことです。痛みを感じにくい人は、この閾値が高く、多少の電流では反応しません。スポーツ選手や筋肉質の人に多く見られます。
年齢とともに皮膚や神経の感度が鈍くなり、EMSの刺激を「感じにくくなる」傾向があります。ただしこれは「効いていない」ということではなく、感じにくくても筋肉は動いていることが多いです。
痛みは皮膚の問題だけでなく、脳がどう「痛み」を解釈するかにも左右されます。ストレスが強いと過敏になり、逆にストレス耐性が強いと痛みに鈍くなります。
因子 | 内容 | 痛みへの影響 |
---|---|---|
① 皮膚の水分量 | 乾燥していると電気が通りにくく痛みやすい | ↑ 痛み増加 |
② 皮下脂肪の厚さ | 脂肪が少ないと電流が浅く強く感じる | ↑ 痛み増加 |
③ 神経閾値 | 閾値が高いと痛みを感じにくい | ↓ 痛み減少 |
④ 精神状態 | 不安・緊張があると痛みに敏感になる | ↑ 痛み増加 |
⑤ 年齢 | 加齢により神経伝導が低下し痛みを感じにくくなる | ↓ 痛み減少 |
⑥ ホルモンバランス | 女性は月経周期によって痛みの感じ方が変化する | 変動あり |
⑦ 脳の痛覚処理特性 | 過去の経験やストレスが影響 | 個人差大 |
十分に湿らせた状態で貼る
筋腹(筋肉の中心)に貼る
骨の近くや関節には貼らない
最初から高出力にせず、体が慣れるまで段階的に上げていくのがポイントです。神経系は反復刺激で慣れていく「可塑性(Neuroplasticity)」を持つため、少しずつ刺激に順応していきます。
EMSは痛みでなく、筋肉の動き(収縮)で評価します。痛みがなくても筋肉が動いていれば十分効果があります。
EMSを「痛くない=効果がない」と誤解する人もいますが、これは正しくありません。むしろ痛みが少ない状態で筋肉がしっかり収縮していることが理想的です。
感じなくても筋収縮していればOK
高周波EMSは表面より深部の筋肉に効くため痛みが少ない
高出力=高効果ではない
筋肉が動いているか
可動域が広がったか
使用後の姿勢や体感が変わったか
自宅用EMS機器は便利ですが、安全性や効果には限界があります。医学・解剖学に基づいたEMS施術を行う専門サロンでは、個人の神経反応に応じた出力調整を行えるため、より安心して継続できます。
EMSが痛い人もいれば、全く痛みを感じない人もいます。その差は、皮膚や神経の状態、脳の痛覚処理など、個人の生理学的特徴によって生まれます。
大切なのは、「痛み」ではなく「筋肉の反応」で効果を判断すること。痛くても安全、痛くなくても効く──それが正しいEMSの理解です。