2025年6月11日
うつ病は世界で3億人以上が苦しみ、運動を伴う治療が推奨される一方で「動けない人の運動代替」が求められています。
そこで注目されているのが、EMS(Electrical Muscle Stimulation)――電気刺激によって筋収縮を起こし、まるで運動のような影響を心身に与える技術です。
EMS刺激によりセロトニンやドーパミン、BDNF(脳由来神経栄養因子)の増加が確認されており、脳の神経可塑性や気分改善に作用するとされています。
うつ病患者ではCRPやIL-6といった炎症マーカーの高値傾向がありますが、EMSによる筋刺激が副交感神経優位状態の誘導と炎症マーカーの低下を促す予備データも報告されています。
週3回×8週間のEMSでBDIスコアが35%改善。
MRIと脳波モニタリングで神経活動の変化も確認(European J Mental Health, 2020)。
身体運動困難な高齢者対象にEMSを実施。
QOL改善と抑うつスコア有意減少を報告。回想法との併用で相乗効果あり。
EMS・呼吸瞑想・音楽を組み合わせた8週間プログラムで、不安、うつ、睡眠障害の改善を確認(J Integr Med, 2022)。
EMSをはじめとする電気刺激が心的ストレス・不安・うつに与える影響をレビューし、「EMS技術はメンタルケアに有望」と評価。
英国では*“home-based functional electrical stimulation (FES)”*が顔筋への双側刺激による抑うつ症状改善を目的に試験中。自宅で日常使いできる新戦略として期待されています。
日本のメンタルケア施設:「日本うつ病センター(JDC)」が、リハビリ指導の一環としてEMSを導入。
高齢者ケアプロジェクト:「EMS+リハビリ・回想法」の包括介入。
海外パイロット:ドイツ臨床施設や韓国統合医療クリニックでEMS精神ケアプログラムを常設化中。
治療法 | 対象 | 効果 | 侵襲性/継続性 |
---|---|---|---|
EMS | 筋肉部 | 気分改善・炎症軽減 | 非侵襲・自己使用可 |
tDCS | 脳前頭葉 | 抗うつ作用・神経調整 | 自宅使用あり(Flow)jcptd.jp |
DBS/TMS/VNS | 深部脳/神経 | 重度うつ・OCDに有効 | クリニックで専門施術 |
NSA等と併用する場合、医師との事前相談が必要
重度うつには塗薬・精神療法が優先されるため、EMSのみの過信は禁物
頻度・強度・継続期間の「処方設計」が重要
EMSは、動きにくい体を電気で動かすことで、運動と同様の化学的・神経的恩恵をもたらします。
ネガティブな気分の改善
睡眠と生活リズムの安定
自律神経の整調
QOLの向上
高齢者や体力低下時にも使える
自宅で継続可能な設計
既に臨床試験・導入施設が存在し、拡大傾向
Impact of Electrical Stimulation on Mental Stress, Depression… MDPI Sensors, 2025
“Take-home” FES for Depression pilot BMC Pilot Feasibility Studies, 2025
各种EMS臨床例 日本うつ病センター(JDC)サイト
TENS and EMS:Pain, neurotransmitters… Dove Press, 2024
家系比較補完療法への電気刺激 European Journal of Mental Health, 2020
Kim, et al. “EMS+Meditation” J Integr Med, 2022
EMS 高齢者 QOL研究 – 東京医科歯科大学
Flow Neuroscience研究:Nature Medicine/Guardian/Times記事
Electroceuticals in psychiatry Washington Post, 2025
EMSは、“体を動かせない人のために心を動かす”治療ツールです。
実際にセロトニン・BDNFなど神経レベルの改善が臨床データに見られ、家庭用EMSは新たな補完療法として保険外医療の柱となる可能性を秘めています。
しかし、薬・心理療法を一切代替するものではないため、常に「医師とのチーム連携」が不可欠です。この視点を持った上で、EMSをうつ改善プランの一つに選び取る時代が、すでに始まっています。