2025年6月11日
──人生の変わり目を健やかに、美しく乗り越えるために
更年期は、女性の体にとって「エストロゲン(女性ホルモン)」の分泌が大きく減少していく時期です。これにより、自律神経の乱れ、肌や骨、筋肉、心の調子にまでさまざまな変化が起きます。
のぼせ、ほてり(ホットフラッシュ)
動悸や発汗
気分の落ち込み、不安感
肌の乾燥、たるみ
骨密度の低下、体重増加
これらの症状に対処するための医療的アプローチが「ホルモン補充療法(HRT)」、そして「運動による体と心の調整」です。
ホルモン補充療法(Hormone Replacement Therapy)とは、更年期に減少する女性ホルモン(主にエストロゲン)を、医師の管理下で外から補充する治療法です。
更年期症状(ほてり・不眠・抑うつ)の緩和
骨粗しょう症の予防
動脈硬化のリスク低下
美容的には肌の保水力・弾力の改善
治療法 | 特徴 |
---|---|
経口薬(飲み薬) | 全身に作用しやすく、最も一般的 |
経皮パッチ・ジェル | 肝臓への負担が少なく、副作用が抑えられる |
膣剤 | 局所的な症状(膣の乾燥など)に効果的 |
※エストロゲン単独か、黄体ホルモン(プロゲステロン)を併用するかは、子宮の有無などにより異なります。
メリット | リスク |
---|---|
更年期症状の改善 | 血栓症のリスク(経口薬に多い) |
骨粗しょう症予防 | 乳がんリスク増加(長期間使用で) |
美容改善(肌・髪) | 不正出血などの副作用 |
✅ 日本産科婦人科学会は、HRTは適切な対象と期間を守れば安全かつ効果的であると明言しています。
自律神経を整える
→ 心拍・呼吸・血圧を安定させる
セロトニン分泌促進
→ 抑うつ・イライラの緩和(医学誌《JAMA》, 2012)
骨密度の維持
→ 骨粗しょう症を防ぐ(日本整形外科学会より)
筋肉量・基礎代謝のアップ
→ 体型維持・ダイエット効果
ウォーキング、軽いジョギング、自転車など
1回20〜40分、やや息が上がる程度が目安
脂肪燃焼、心肺機能の強化、ストレス軽減
自重スクワット、ヒップリフト、腕立て伏せ
特に下半身の筋肉(大腿四頭筋、臀筋など)を鍛えると代謝が上がる
体の引き締め、姿勢改善、骨密度の維持
深い呼吸とともに関節・筋肉をゆっくり動かす
「EMS+ヨガ」の組み合わせは筋肉の深層まで活性化できて効果的
自律神経調整、睡眠の質改善、リラックス
世界の先進国では、「HRT×運動×栄養」の統合医療が更年期対策のスタンダードになりつつあります。
アメリカ:メイヨークリニック、クレランドクリニックでは、運動療法とHRTを個別に処方
ドイツ:保険適用でホルモン療法+理学療法(EMSや筋トレ)を併用
日本:自由診療の更年期外来で、HRTとフィジカルセラピーを併用する施設が増加中
A. 乳がん・血栓症の既往がある方などは慎重に検討が必要です。必ず婦人科医と相談しましょう。
A. はい。特に深層筋(腹横筋、骨盤底筋)を効率よく刺激できるため、体幹安定・代謝改善に効果的です。
ホルモンの変化によって心も体も揺らぐ時期。それを放置すれば“老化の加速”になりますが、正しい医療・運動・生活習慣を味方につければ、50代からでも驚くほど健康で若々しくなれます。
自分の体を知り、受け入れ、整えることが最大の美容法。
日本産科婦人科学会「更年期とホルモン補充療法(HRT)」
JAMA Internal Medicine, 2012: “Exercise and Depression in Midlife Women”
Mayo Clinic Women’s Health Resources
日本整形外科学会「骨粗鬆症予防における運動の推奨」
Climacteric, 2019: “Benefits and Risks of HRT in Postmenopausal Women”
NHKスペシャル「閉経と女性の健康最前線」