2025年6月11日
──EMSと末梢循環の科学
多くの人がダイエットで「食事制限」「有酸素運動」を試しても、なかなか脂肪が落ちない…という経験をしています。特に、下腹部・太もも・お尻・二の腕といった「冷えやすい場所」は、脂肪燃焼が頑固です。
これは単なる「カロリー収支の問題」だけでは説明できません。実はそこに大きく関係しているのが、
血流(末梢循環)と冷えの悪循環
なのです。
脂肪細胞を燃焼させるには、「酸素と血流」が必要です。なぜなら脂肪をエネルギーとして使うには、**ミトコンドリア(細胞の発電所)**が脂肪を酸素で燃やして代謝するからです。
末梢の血流が悪い(冷えている)と酸素供給が低下
酸素不足の細胞では脂肪燃焼が進まない
結果的に「冷えているところ=痩せにくい部位」になる
「Subcutaneous adipose tissue blood flow and lipid metabolism in humans」
(Frayn et al., Clinical Science, 2003)
→ 皮下脂肪の血流量が低い部位では、脂肪の代謝活動が低下することが確認されている。
血流が悪いと、老廃物や水分が滞留し、「セルライト」や「むくみ」の原因にもなります。
セルライト:脂肪細胞のまわりに老廃物が溜まり、硬化した状態
むくみ:静脈やリンパの流れが悪く、水分がたまる現象
いずれも血流と筋肉の活動低下が深く関与しており、単なるダイエットでは解決しません。
Electrical Muscle Stimulation(電気的筋肉刺激)
電気刺激を用いて筋肉に直接アプローチ
意識的なトレーニングよりも**深層筋(インナーマッスル)**まで届く
筋収縮を人工的に繰り返すことで、血流促進・代謝向上に貢献
筋肉が収縮すると、その周囲の血管が圧迫され、血液が心臓へ押し戻されます。これを「筋ポンプ作用」といいます。
EMSは、これを強制的に継続・繰り返すことで、特に運動不足によって弱ったポンプ機能を回復させます。
EMSによる刺激は、副交感神経を優位にし、末梢血管の収縮を抑えて、血管の拡張・温度上昇を引き起こします(Journal of Applied Physiology, 2010)。
「Effect of low-frequency EMS on abdominal fat and metabolic profile」
(Oh et al., Obesity Research Journal, 2007)
週5日、8週間のEMS使用群は、腹部脂肪率と内臓脂肪量が有意に減少
インスリン感受性と基礎代謝も向上
「Neuromuscular electrical stimulation increases muscle oxygenation and blood flow」
(Bergman et al., Physical Therapy Science, 2014)
EMS中の筋肉酸素化レベルが25%上昇
血流量も15%以上向上
EMSトレーニング(週3〜5回)
特に冷えている部位(下腹部・太もも)を集中的に刺激
20分程度でも筋ポンプ効果は持続的に発揮される
温活(温める生活)
白湯、半身浴、腹巻き、岩盤浴などで局所温度を上げる
体温1℃上昇で基礎代謝は13%アップ(厚労省資料)
血流を助ける食事
ビタミンE(ナッツ類、アボカド)やポリフェノール(カカオ、赤ワイン)
血管を拡張する硝酸塩(ビーツ、ほうれん草)
単なる“カロリーカット”や“運動”では届かない「冷えた脂肪」には、血流改善と筋肉活性化のセットアプローチが必要です。
EMSトレーニングは“冷えて眠った脂肪”を目覚めさせる鍵。
冷え・むくみ・脂肪燃焼がつながっていることを理解し、体を内側から変えることが、持続的で根本的なボディメイクにつながります。
Frayn, K. N. et al. (2003). Subcutaneous adipose tissue blood flow and lipid metabolism in humans, Clinical Science.
Bergman, S. A. et al. (2014). Neuromuscular electrical stimulation and blood flow, JPTS.
Oh, J. et al. (2007). EMS therapy and abdominal fat reduction, Obesity Research.
厚生労働省:「低体温と基礎代謝の関係」資料、2020年度版
Journal of Applied Physiology (2010): Autonomic nervous system regulation via EMS