2025年6月27日
世界の人口は2024年現在で約80億人。
そのうち4人に1人が“安全な水”へのアクセスを欠いているとされています(WHO/UNICEF報告)。
こうした中、世界経済フォーラム(WEF)は「水不足(水ストレス)」を人類と地球にとって最も深刻な長期リスクの一つと警告しています。
毎年発行されるWEFの「Global Risks Report」では、水関連リスクは以下のようなクロスリスクの震源地として登場します:
リスクカテゴリ | 水不足との関係 |
---|---|
経済 | 農業・工業生産の停滞、水資源争奪戦 |
社会 | 貧困・格差拡大、衛生環境の悪化 |
地政学 | 国境を越えた“水戦争”の勃発 |
環境 | 生態系崩壊、砂漠化、干ばつの常態化 |
技術 | 海水淡水化技術・循環水処理の格差問題 |
水は農業において最大の消費資源(全体の約70%)。
灌漑用水が不足すれば、小麦・トウモロコシ・米など基幹穀物の供給が危機に。
国際価格の高騰 → 政情不安 → 食糧暴動へと発展する可能性。
事例:2010年以降の中東「アラブの春」は、小麦価格高騰が引き金の一因とされる。
清潔な水がなければ、手洗い・調理・排水が困難に。
コレラ・赤痢・腸チフスなどの水系感染症が拡大。
COVID-19でも、水インフラが弱い国ほど感染制御に苦しんだ。
サヘル地域や南アジアでは、水不足によって村単位での移住が始まっている。
気候難民と水難民が都市部へ流入 → 治安・インフラ・経済を圧迫。
国境を越える移民が地政学的対立・排外主義を引き起こす。
世界には国境をまたぐ河川が263本以上存在。
上流国によるダム建設・水路制御は、下流国への圧力・脅威となる。
事例:
エチオピア vs エジプト(ナイル川)
インド vs バングラデシュ(ガンジス川)
トルコ vs シリア・イラク(チグリス・ユーフラテス)
半導体・製薬・電力・食品などは、大量の水資源を必要とする産業。
供給不安が投資回避・雇用減・産業空洞化を招く。
補足:台湾のTSMCでは、2021年の干ばつにより工場での水使用量制限が生産リスクとなった。
日本でも水道管の老朽化が深刻(40年以上経過した管が全国の約15%)。
再生水や下水の活用率がOECD平均よりも低い。
災害時の断水や都市部の水需給逼迫も、今後のリスク。
AIとIoTによる水使用の最適化
配管の漏水監視・流量制御
水循環の可視化とデータ共有
太陽光×逆浸透膜による再生可能型プラントの普及
工業排水からの再利用技術(ゼロ・リキッド・ディスチャージ)
国境水資源の共有協定
「水の持続可能性スコア」による国際評価と支援誘導
「水不足」は単なる環境問題ではなく、人類社会全体の安定性と未来を左右する統合型リスクです。
世界経済フォーラムが繰り返し強調するのは、**水は最も見落とされてきた“戦略資源”**だという事実。
経済界・政策決定者・市民一人ひとりがこの“透明な危機”に気づき、水の未来を守るアクションを取ることが求められています。
【必読】創業した理由:表面的な若さや細さを追うのではなく、年齢や体調に関係なく“自分らしく美しくあること”を再定義したい
【EMSの真実】知性は、身体に宿る─本物を知る人が辿り着く“沈黙の筋肉”へのアプローチ