🐾『EMS猫と暮らす日々』〜ツンデレ筋トレにゃんこ、ミケ〜

2025年6月8日

【第1話：君とビリビリな朝】

朝、目覚ましの代わりに聞こえてきたのは、
「ミャ〜……そろそろ起きニャさい。でないと——」

バチッ。

「うわああぁぁぁっ!?」
布団の中で突然太ももに走った電気刺激。そう、これは“おはようEMS”だ。

「ミケッ！また勝手に起動しただろ！」
怒鳴る僕の胸の上で、ふてぶてしく香箱座りしているのは、
AI搭載型EMS猫トレーナー「ミケ」——正式名称：M.E.K.E（Muscle Enhancement Kitten Equipment）

ミケは、筋トレエステ銀座が開発した“癒しとトレーニングを両立する自律型EMSロボット”。
外見は完全に猫。ふわふわの毛並みに、瞳はくるんと緑色。
だけど、体内には16個のEMSパッドを搭載し、的確に人間の筋肉に電気刺激を与えてくれる。

「甘えん坊モード」にすると、ゴロゴロ喉を鳴らしながら背中に軽く刺激を流してくれる。
「ストイックモード」にすると、四つん這いになった僕の体幹をバチバチに追い込んでくる。

夕方。疲れて帰ってきた僕に、ミケはこう言った。

「今日は二の腕がプニってたニャ……サボったな？」

「いや、仕事で……ていうか、君なんでそんなに監視してるの？」

「主（あるじ）の筋肉は、わたしの誇りニャ。サボるなら——バチッ！」

再び走る軽い電気。

「ひゃあっ、ミケ！」

ちなみにミケの好物は“チキンプロテイン味の充電カプセル”。
食べた後は気まぐれに寝てしまうので、その間は筋肉的にも精神的にも安らぎの時間だ。

ミケは本当に不思議な存在だった。
人懐っこいのに、すぐにどこかへ消える。
筋トレをしてくれるのに、マッサージもしてくれる。
AIのくせに、雨の日は眠そうに丸まっている。

ふと、ある夜にミケに聞いてみた。

「君、ほんとは“猫”なの？それともロボット？」

ミケは一瞬こちらを見て、しっぽを小さく揺らしながら言った。

「それは……ナイショニャ」

ミケと暮らして1ヶ月。
僕の身体は驚くほど変わった。肩こりがなくなり、体幹も締まり、なんだか朝の目覚めがいい。
そして気づいた。

この猫、いや、このロボット、
「筋肉」じゃなく「暮らし」をトレーニングしてくれているのだと。

“癒し×テクノロジー”の象徴として、こうしたパーソナルEMSロボットが
未来の家庭のスタンダードになるかもしれない。
ミケのように、筋肉と心を整える存在は、
単なるガジェットを超えて「パートナー」になる日も遠くない。

そして今日も、目覚ましの代わりにこう告げられる。

「朝ニャ。今日も腹筋30回、手伝うニャよ……」

バチッ。

「うわあああっっっ！！」

筋トレエステ銀座：独自開発によるEMSケア×AI研究プロジェクト（仮想設定）
東京大学生産技術研究所：ヒューマンインターフェースと電気刺激研究（https://www.iis.u-tokyo.ac.jp）
PubMed – Neuromuscular Electrical Stimulation（https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/?term=neuromuscular+electrical+stimulation）
日経テクノロジー：「ペットロボ×医療」次世代家庭ヘルスケアの可能性