2025年6月11日
〜“痩せる”と“太る”を繰り返す体に、いま何が起きているのか〜
「食事制限で痩せたけど、数ヶ月で元に戻った」
「ダイエットするたびに太りやすくなってきた気がする」
それは意志が弱いからでも、努力が足りないからでもありません。
問題は、あなたの身体の“生存本能”に反した方法で痩せようとしているからです。
ここでは、世界中の肥満研究をもとに、リバウンドの恐ろしさと、繰り返すことで体に何が起きるのかを科学的に解説します。
**リバウンド(Rebound)**とは、一度減った体重が元に戻る、もしくはそれ以上に増加してしまう現象を指します。
極端な食事制限 → 基礎代謝が低下し、“省エネ体質”に
筋肉量の減少 → 消費エネルギーの減少+脂肪が蓄積しやすくなる
ホルモンの変化 → レプチン、インスリン、グレリンのバランスが崩れる
このような代謝変化により、「痩せにくく・太りやすい体」になっていくのです。
極端なダイエットで筋肉が落ちると、体は「飢餓モード」に入り、省エネで生きようとします。
その結果、太りやすく、痩せにくい体質が固定化されてしまいます。
✅ ハーバード大学公衆衛生学部の研究(2016)では、「過度な体重変動を繰り返すほど、将来的に安定した減量が困難になる」と報告。
レプチン(満腹ホルモン)が低下
グレリン(食欲増進ホルモン)が上昇
結果:少しの食事でも満足できず、暴食のスイッチが入りやすい体質へ
脂肪細胞は、一度増えると二度と減りません(※数は減らず、縮むだけ)。
痩せると一時的に小さくなりますが、再びエネルギー過多になると以前よりも早く・多く膨らむように体が反応します。
国立肥満研究センター(スウェーデン)の報告:
「リバウンドによって体脂肪細胞の密度が増加し、長期的に肥満の戻りやすさを構造的に強化してしまう」
短期のダイエット後に再度体重が増えると、皮下脂肪よりも内臓脂肪のほうが早く・多く蓄積します。
内臓脂肪の増加は、以下の疾患リスクを高めます:
2型糖尿病
高血圧
動脈硬化
心疾患
脂肪肝
⚠️ リバウンドは「美容問題」だけでなく、「慢性疾患」の引き金にもなるのです。
リバウンドによって自己否定感が強まる
過食と断食のループに陥る(摂食障害の温床)
セロトニン・ドーパミンの分泌が不安定になり、うつ傾向が増大
🧠 世界精神医学会の報告では、「体重の増減が激しい女性は、摂食障害リスクが3倍高まる」とされています。
米国国立体重管理登録(NWCR)によれば、減量後に体重を5年間維持できた人の習慣には共通点があります:
毎日体重を測る
朝食を欠かさない
食事制限よりも運動でカロリーを調整
一時的な増加に一喜一憂せず、週単位で見る
リバウンド経験は、決して無駄ではありません。
そこから“自分に合った生理的なコントロール法”を見つけることが、最も科学的な方法なのです。
極端な制限を避ける(-15%以内のカロリー制限)
筋肉を減らさない(筋トレ+たんぱく質摂取)
ストレスケア(腸内環境・睡眠・メンタル)
長期計画(半年〜1年単位)で体重コントロール
また、最新のアプローチとしては、EMS(電気筋肉刺激)や医師監修の代謝サポートプログラムも活用されています。
リバウンドは単なる“元に戻る現象”ではありません。
ホルモン、代謝、神経、細胞レベルで「太りやすい体質」を形成する現象です。
体重は一時的に減っても、あなたの「生体システム」はすぐに“元の飢餓耐性モード”に戻ろうとする。
その繰り返しが、取り返しのつかない体内環境をつくるのです。
Fothergill E, et al. (2016). “Persistent metabolic adaptation 6 years after ‘The Biggest Loser’ competition.” Obesity.
Leibel RL, Rosenbaum M, Hirsch J. (1995). “Changes in energy expenditure resulting from altered body weight.” NEJM.
National Weight Control Registry (NWCR) database.
Sumithran P, et al. (2011). “Long-term persistence of hormonal adaptations to weight loss.” NEJM.
国立健康・栄養研究所:体重変動と健康に関するメタ分析
体は、あなたの“意志”よりも、“生存戦略”に忠実です。
本当に賢いダイエットとは、「痩せる方法」ではなく、「痩せ続けられる体の作り方」を知ることです。